「アワー・コネクション」 〜 いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー
ついにこの名盤を入手しました。以前からすごく欲しかったのですが、他にも欲しいCDとかがありなかなか入手しそびれておりました。今回の入手も偶然の出会いでした。例によって図書館で音源を物色していたところ、ふと手にした「いしだあゆみ・しんぐるこれくしょん」。いしだあゆみさんの音源は京平さんのコンピくらいしか無かったのでいい機会だから借りてみようと思い借りてきました。この2枚組のCDはコロンビア時代のシングルのA面31枚全てが収録されています(いわゆる歌謡曲歌手としての彼女の魅力はこれで満喫できます)。ところが、私にとってはちょっとしたサプライズな収録曲としてディスク2の後半は、前述の名盤「アワー・コネクション」がまるまる収録されていたのです。うれしい展開でした。前半のシングル集もすごく良いのですが、今回はこのティン・パン演奏の「アワー・コネクション」部分のみメモしておきます。
彼女のシングルのうちチャートに入ったものはほぼリアルタイムで歌番組等で子供時代の耳入って来ていますし、当時そういった流れてくる歌謡曲の中でもお気に入りの歌をうたうイメージがありました。その後、アイドル歌謡ファンとなってからも、筒美京平先生との関連で常に捉えてきました。ところがこのティン・パン・アレイ・ファミリーとの作品はほとんで意識してきませんでした。ティン・パンの方々が歌謡曲のバック演奏をしていたことは十分知ってはいたのですがそこまで深く作品を追いかけていなかったのですね。今から補完しまくりです。もっとも、70年代にリアルタイムに意識することはあまり悔やんではいません。その当時にもっとロックな楽曲に夢中になっていたからこそ今の自分があるわけですからね。リアルタイムで正統にこのアルバムを評価できているひとは相当少なかったのではないでしょうかね。当時の音楽誌は歌謡曲を正統に評価することは出来ていなかったと思います。
現在、再発されたこのアルバムをJ-POP的な元祖として聴かれるのでしょうけど、やはり基本は歌謡曲なんですよね。そういった意味でこのアルバム、ロック的なアレンジ・演奏と歌謡曲側制作サイドのぶつかり合いを感じます。いしだあゆみさんは、当時ティン・パン・アレイ系な方々が仮想的と考えていた歌謡曲のプロの作家(特に京平先生)の曲を歌う代表的な歌手ですから、彼女を頂点におき、京平先生的アプローチを超えることを無意識に意識していたに違いないと思います。そんななかでもやや歌謡曲よりにしっくり収まっているのは、全曲の作詞を手がけた橋本淳さんのプロディース力なのではないでしょうか。やはりいしだあゆみさんの世界観は橋本淳さんの作詞の世界が有ってこそなのかなと、ティンパンの演奏以上にそんなことを感じさせてくれました。話はそれますが、松田聖子&松本隆 vs いしだあゆみ&橋本淳という企画の作詞&プロデュース論を読んでみたいです、どなたかお願いします。この時期のティン・パン・アレイは、最後期であり細野さんもYMO直前の時期であります。それだけに歌謡曲のバックとしてはこなれて仕事している感じなのかな。アレンジ・演奏すべてに素晴らしいのですが、ちゃんといしだあゆみさんが全面に出ているのですよね。
この素晴らしいバックミュージシャンのクレジットをライナーより転記しておきます。
Musicans
ティン・パン・アレイ (なぜか松任谷正隆不在)
Electric Bass & Folk Guitar 細野晴臣
Electric Guitar 鈴木茂
Drums 林立夫
Guest Musicans
Keyboards 矢野顕子・岡田徹・佐藤博・羽田健太郎 (何と豪華な面々)
Horn ジェイク・H・コンセプション (「AVANTI」のバーテンダーいつかこのひと特集したい)
latin-percussion 浜口茂外也
Folk Guitar 吉川忠英
Chorus 吉田美奈子・山下達郎
- 私自身
作詞:橋本淳 作曲:細野晴臣 編曲:細野晴臣
ティン・パンのサウンドにポエトリー・リーディング的な始まり、いいですね。この良さはもっと1977年のリアルタイムに聴いたらおそらく分からなかったかもです。- ひとり旅
作詞:橋本淳 作曲:細野晴臣 編曲:細野晴臣・萩田光雄- 六本木ララバイ
作詞:橋本淳 作曲:萩田光雄 編曲:萩田光雄
シングルカット予定だった曲。
- ダンシング
シングルカット予定だった曲。
作詞:橋本淳 作曲:細野晴臣 編曲:細野晴臣・萩田光雄- バレンタイン・デー
作詞:橋本淳 作曲:萩田光雄 編曲:萩田光雄- 黄昏どき
作詞:橋本淳 作曲:萩田光雄 編曲:萩田光雄- 真夜中のアマン
作詞:橋本淳 作曲:細野晴臣 編曲:細野晴臣・萩田光雄- 哀愁の部屋
作詞:橋本淳 作曲:萩田光雄 編曲:萩田光雄- ウィンター・コンサート
作詞:橋本淳 作曲:萩田光雄 編曲:萩田光雄
茂さんギター全開の曲。- そしてベルが鳴る
作詞:橋本淳 作曲:萩田光雄 編曲:萩田光雄- ムーン・ライト
作詞:橋本淳 作曲:細野晴臣 編曲:細野晴臣・萩田光雄- バイ・バイ・ジェット
作詞:橋本淳 作曲:細野晴臣 編曲:細野晴臣・萩田光雄
ある意味飛行機もの。いかにも細野さんぽい曲に、達郎さんと美奈子さんのコーラスがさらによいです。
一部埋め込み禁止動画をむりやり埋め込んでますのでYuTube上でお楽しみください(それも消されるまでですけどね)。
楽曲的には細野さんパートと萩田さんパートがハッキリ分けれますね。このアルバム当たりが大ブレイクしていたら、細野さんも職業作家の仲間入りしていたのでしょうかね。YMOも存在していなくて。
ティン・パン系の演奏ということでは、雪村いづみさんの「スーパー・ジェネレイション」も必聴ですね。こちらのほうが演奏がトンガッているかもしれません。スーパー・ジェネレイション / キャラメル・ママ 雪村いづみ
さらに、橋本淳さん自身がこのアルバムの解説書に書かれていたように、このアルバムの数年前に発売されている「ファンタジー」も素晴らしいアルバムなのでぜひCDでの再発を望みたいところです。
いしだあゆみとニューミュージックと言えば「おや?」と思われる方も多いことでしょうが、彼女はニューミュージックと呼ばれる音楽が今日にように開花する前から、いわば創成期の頃から彼等の音楽とは深いかかわりあいをもっていました。それは数年前に発売された「ファンタジー」と題するアルバムであります。彼女が歌謡界にスターであるだけにメディアを通じてその音楽的な真価がファンの前に展開されにくいことは残念でありまが、時代の息吹に触れながら新鮮な歌ごころをなくさずに飛びつづける彼女はたいへんチャーミングであります。
「アワー・コネクション」橋本淳 解説書より
このアルバムのよさは下記のブログでも。
ソフトロック・ドライヴィン〜愛のひととき (アルバム) - むぎ茶の昭和懐メロ&CMソング大特集
あと、アマゾンのレビューにもありましたけど、某D氏のライナーはちょっと残念だったかもです。彼が好きな世界や言いたいことは分かるのですけね。がんばれDくん。
追記:このアルバムの印象で私がうまく表現できなかったと事をむぎ茶さんのブログよく現してくれています。そうだからこの1曲目なのです。
アワー・コネクション:いしだあゆみさん自身 - むぎ茶の昭和懐メロ&CMソング大特集
発売元: コロムビアミュージックエンタテインメント
価格: ¥ 2,040 (11% OFF)
発売日: 2007/04/18
売上ランキング: 60225
すでにベスト盤的なものを持っていない方なら、こちらの「しんぐるこれくしょん」の方がお得ですね。