すべてが狂ってる
全くの予備知識なしの映画だったのですが、監督が鈴木清順、音楽が三保敬太郎&前田憲男ということで衝動借りでした。1960年の若者をテーマの映画ですがストリー的なには決して見終わったあと愉快な映画ではありません。なんとも救いのない気持ちになる映画であります。ただ、後の清順監督のいかにも的な演出は控えめではありますが、後半のスポーツカーを乗り回しての展開はシーンとして面白く観れました。また、この映画一番の売りは音楽担当の三保敬太郎&前田憲男ということに尽きるでしょう。何しろモダンジャズ3人会のお二人ですからね。全編流れるジャズはなんともカッコいいものがありました。まさに和製ヌーベルバーグ的な作りでしょうか。やはり三保敬太郎さんとスポーツカーの組み合わせはこの頃から素敵です。やはり、ビートルズによるロック前夜の1960年ですから、若者のやるせない気持ちはやはりジャズなのです。そしてラストシーンはなんとジャズミュージシャンのコールマン・ホーキンスのポスターのアップなのです。やはりジャズ映画であったいえるのでしょう。
- Kansas City Art Festival - My One & Only Love-Art Tatum I want to be loved-Coleman Hawkins
この映画の前年リリース「 The High And Mighty Hawk」より
主演の川地民夫さんの若いころはかなりナイーブな印象でちょっと見ていられない感じな若者。その母親役の奈良岡朋子さんはプロフィールによるとかなりのジャズ好きということで、制作現場をつい妄想したくなっちゃいました。ヒロイン役の禰津良子さんはモデル出身で清順監督のお気に入りということで出演されたそうですが、女優としては直ぐに引退してしまったようです。なかなかお嬢様でないかわいい感じの娘でした。
残念な事に、この映画出演者として資料に記載されているのは坂本九さんと吉永小百合さんが記載されてしまうのは仕方がないですかね、どちらもストリーに関係のないちょっとしたシーンのみの出演です。吉永小百合さんはまだ「キューポラのある街」でのブレーク直前ですし、九ちゃんは初ヒットの「悲しき六十才」とほぼ同時期で、劇中の歌唱シーンはなかなか観ものでした。
(関係無いですが、今回九ちゃんのプロフを改めて確認してびっくり、あの阿部薫さんは九ちゃんのお姉さんのお子さんつまり甥っ子だったのです)
というわけで、この映画、実はサントラの方が評価高かったりしています。再発もされているようです、ちょっと興味出てきましたのでいつか機会があれば入手したいです。